貪欲に戯言をぬかそう

"Try to know something about everything, everything about something."
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AIBO

3歳のころ、僕には相棒ができた。

メスの柴犬、名前はチビ。
兄妹の中でも、一番小さかったから、チビ。

でも頭はとても良かった。
他に飼われていたどのイヌよりも、
器用で、賢かった。

僕らの散歩コースは山の中。
いつもチビは走っていた。いつも何よりも速かった。
あれより速いイヌは未だに見ていない。

そしていつもそのままの勢いで僕に突進してきた。
僕は吹っ飛ぶ。僕は泣く。

しばらく力関係は崩せなかったけど、
ともかく僕らは仲良しだった。


それから数年後、僕は引っ越すことになった。
祖父の家にいたチビとは離れることになった。

犬は飼い主の恩を一生忘れないという話はよくあるけど、
もちろんチビもそうだった。

離れて何年経っても、会うと必ず、とびついてきた。
でももう泣かされることはなかった。
力関係の逆転。圧倒的勝利。

僕らはいくつになっても、会う度にいつもの山を散歩してた。




しばらく時を経て、たぶん僕が19歳くらいのころ、
ひさしぶりにチビに会った。

彼女はもう年老いていて、前みたいに走ることもなかった。
歩くことも面倒で、周囲への関心も薄れていた。

それどころか、僕のことすら忘れていた。

それなりにショックだった。

あれだけ元気だった彼女はボケてしまい、
それは同時に別れが近いことも意味していた。

老いるって、そういうことなのか。
当時の僕はそう感じていた。

ほどなく彼女は他界したらしい。
想定していたほど、あまり哀しくもなかった。
忘れられた身としては、そんなものだろうなと思った。




それからまた数年が経った。
ふと彼女のことを思い出す。

今になって考えてみると、彼女はボケてたわけじゃない。
あの日、僕に見せた態度は。

「しばらく見ない間に、つまんなくなったね」

きっとそんな、意志を持った無関心だった。

あのころの僕にまとわりついていたものは、
概ねくだらないことだった。




いまの自分なら、またチビと一緒に走れる気がする。
あの山で、日が暮れるまで、湧き水の目印を目指して。

もうきっと、泣かされることはないけれど。
author: 猫八
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Comments:
3月だったかなー
実家で飼ってたウェルシュ・コーギーが死んでしまって、末っ子の妹が泣きながら電話してきたな。

糖尿病を患っていて、死ぬ2、3日前にちょっと世話ができたけど、最後に別れのチャンスが巡ってきたのかなあと思ったり。
comment by: sitesnk | 2010/07/31 11:59 PM
>sitesnk
犬も猫も好きだけど、最期が来ることを事実として知ってしまうと、
なかなか飼おうと思えないんだよなぁ。
comment by: 猫八 | 2010/08/04 12:30 PM
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